ワンルームで御曹司を飼う方法
「――起きてるか?」
二十分ほどして、シャワーからあがった充がベッドにやって来た。
背を向けて寝ていた私のすぐ横に手をつき、覆いかぶさるように顔を覗き込んでくる。
「……起きてます」
ベッドライトに照らされた充はまだ髪の先から雫が垂れていて、それが首筋を伝って流れていくのを間近で見て、私の心臓が早鐘を打ち始めた。
「眠い?」
指先で私の髪を除けて剥き出しになった耳に、充がキスと質問を同時に落とす。
「……平気」
吐息交じりになってしまった返事が恥ずかしい。思わず顔を背けて枕にうずめてしまえば、充が体重をかけて私の上に重なってきた。
「みやげ話、聞く?」
耳のすぐ後ろで尋ねてきた声は、穏やかだけどどこか楽しそうだ。
「みやげ話……?」
枕に押しつけた顔を少しだけずらして聞き返せば、充は私の上から降りて、向かい合うように隣に頬杖をついて寝ころんだ。
「朝になればあっちこっちのニュースで流れると思うけどさ、すげー面白いことがあったんだよ。灯里にも見せたかったなー」
「な、何があったんですか……?」
もしかしてそれが帰りが遅くなった理由なんだろうか。
おずおずと尋ねると、充は楽しそうにニコニコしたまま手を伸ばし、私の髪をひと房つかまえてクルクルと指先で弄び始めた。