ワンルームで御曹司を飼う方法
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深夜三時――。
俺の話を聞き終えた灯里は、笑ってしまいそうになるくらい安堵の表情を浮かべてあっという間に寝てしまった。
「やきもち焼きだな、案外」
スヤスヤと寝息をたてる灯里の髪を悪戯に弄りながら、思わず肩をクスクスと揺らす。
灯里の気持ちは分からなくない。俺だってこいつが幼なじみの蓮の結婚式に行ったときには、落ち着かなくてモヤモヤして、ちょっとばかり自己嫌悪にまで陥ったのだから。
今は関係ない、妬く必要なんかこれっぽっちもない、過去の相手。そんなことは頭では分かっていても、うっすらとした不安な感情が湧いてきてしまうのが、恋ってやつなんだろう。
俺が颯の婚約パーティーに行くと聞いてから、灯里はちょっとずつ元気を失くしていた。そして今夜に至っては、頭の上で雨でも降っているんじゃないかというぐらいドンヨリとした雰囲気を纏っていたほどだ。
それでも彼女は何も言わない。性格なんだと思う。嫉妬する自分を恥じて、それを抑え込もうとしてしまう自罰的な。
「言っていいのに。言いたいこと、言えるようになったって威張ってたじゃんか」
サラサラとした長い髪を何度も指で梳きながら、眠る彼女に話しかける。当然返ってくるのは寝息だけだけど。
「まあでも――俺も、灯里が蓮の結婚式行ったとき嫉妬してるなんて言えなかったしな」
灯里がぐっすり眠っているのをいいことに、カッコ悪い秘密を吐露した。
俺だって、もう決着のついた恋にやきもきしていただなんて、情けなさ過ぎてとても口に出来なかった。
気持ちを腹には溜め込まない性格だと自分では思っていたのに、我ながら驚きだったっけ。