ワンルームで御曹司を飼う方法
戻した視界に映ったのは、ペットショップのショーウインドウ。フカフカの子犬ややんちゃな子猫が歩道沿いに設けられたディスプレイのスペースで、元気いっぱいに遊んでいる。
「わー可愛い。いいなあ、ペット。飼いたいなあ」
小さな生き物達の愛らしさに、思わず目尻を下げてショーウインドウに張り付いてしまった。そんな私に気付いて、なつっこい柴犬が窓に寄ってくるもんだから可愛くてたまらない。
元々動物は好きな私。子供の頃は雑種だけど猫も飼っていた。大人しいキジトラの子で、小さかった私はその子を撫でながらよく話し掛けてたっけ。当然、猫が返事や相槌を返してくれる訳は無いんだけど、それでも黙って聞いてくれてるみたいでなんだか楽しかった。今思うと、ああいうのペットセラピーっていうのかな?
そんな事を思い出しているとますますペットが欲しくなって来て、私はショーウィンドウの向こうの動物達に目を細めた。
「一緒に暮らしたら楽しいだろうなあ。手も掛かるだろうけど、そこが可愛いっていうか」
いっぱい甘えさせてあげて、美味しい餌あげて、それで夜は一緒寝るんだ。ああ、きっと居てくれるだけで癒されそう。
――けれど現実問題。アパートはペット禁止だし、金銭的な余裕だって無い。可愛いペットを飼うなんて夢のまた夢だよね。
私は名残惜しくショーウィンドウから離れると、子犬や子猫たちに力なく微笑んでからペットショップに背を向けた。可愛い動物を見れただけでも良しとしよう、うん。なんだか元気出た。そんな風に思って再び秋の空を見上げる。高く澄んだ空は、さっきよりは寂しくない気がした。