ワンルームで御曹司を飼う方法

4・充monologue


【4・充モノローグ】


 会社の経営に於いて一番大切なのは“勘”だと思ってる。

 時代を読む勘、需要を見極める勘、ビジネスパートナーを選ぶ勘。そして、俺が生まれながらにしてその才能を持ち合わせているのは、爺さんである総会長も認めるところだ。俺は1度たりとも大きな場面で判断を誤ったことがない。

 そして、そんな“勘”はふって沸いた俺の窮地をも救ってくれた。


『結城物流第二倉庫 宗根灯里』

 子会社の社員証を持った彼女を見たとき、俺は咄嗟に閃いた。下がった眉尻、気の弱そうな瞳。けれど愛想笑いをしようと口角は一生懸命上がっている。

――あ、こいつお人よしだ。しかもかなりの。

 そうピンときたのだ。

 そしてやっぱり俺の勘は的中する。


 なんのかんの不満そうな顔をしながらも世話をやいてくれた宗根は生粋のお人よしで、俺はこの狭い部屋がなかなか心地いい事を知ってしまった。

 いずれ恩は返すつもりだ。それこそ勘当が解けたら今の十倍は広いマンションでも礼にくれてやろう。

だからもうちょっとだけいいか、そんな軽い気持ちで台湾から帰った俺はリムジンの運転手に宗根のアパートへ送るよう言付けた。


 俺の判断は間違ってない。けれどただひとつ、迂闊だったのは。

 『お人よしは伝染る』ってのを、俺が知らなかったって事だ。

 
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