ワンルームで御曹司を飼う方法
……27歳にもなって、交友関係まで家に掌握されてるのか。なんとなく、それって可愛そうな気がするのは変なのかな。
図々しくなついてきた野良犬は、もしかしたら初めて籠の外に出た小鳥だったのかも知れない。なんか犬だか鳥だか分からなくなってきたけど。
「じゃあ……私が唯一、結城の範疇外の人物だと」
「まあ、そうだな。だから俺ここしか帰る場所ないってわけ」
私は思う。野良犬には一瞬だって同情を掛けちゃ駄目だなって。だってほら。
「……晩ご飯にしましょうか。今日はカボチャのシチューだけどいいですか?」
もう一晩くらいいっか、なんて。私はものすごく甘っちょろい考えを持ってしまったんだから。
「オッケー。あったかいもん喰いたいと思ってたんだ、気が利くじゃん」
そして、謙虚の欠片も無い社長の態度に、さっそく情けを掛けた事を後悔しちゃってる私は本当に馬鹿なんだと思う。
***
「とりあえず今夜は仕方ないとしても、明日はどこか泊まる宛てあるんですか?」
ふたり分の食事を乗せるといっぱいになってしまうミニテーブルで、向かいあってシチューを食べながら私はストレートに尋ねた。
「無いよ。だからしばらくはここに居ようかと思って」
私の都合も気持ちも丸無視した発言を、結城社長は美味しそうにシチューを食べながら答える。この徹底した自己中ぶりにもはや感心すらしてしまう。
「しばらくって……申し訳ないけど、困ります」
「なんで?」
「なんでって、だって私これでも一応女なんですよ。いきなり男の人と生活するなんて常識的にありえません。それに社長と一緒だなんて、さすがに気を使うというかなんと言うか。……とにかく、困ります」