ワンルームで御曹司を飼う方法
「ニャーニャーでもワンワンでもいいよ、宗根が思うように扱えばいい。いくらお前でもペット相手ならいらん気も使わないだろ」
日本を代表する大財閥の御曹司をペット扱いだなんて。そんな恐ろしい権利、私にはとても掌握しきれないので放棄したいところだけど。
……無遠慮で、手が掛かって、餌と寝床になついて身勝手で。確かに社長の行動は拾われたペットに酷似していると、私は心の底から納得してしまった。ただし、ペットとして一番大事な癒し効果が無いのが問題だけれども。
「ペット……なるほど、ペットですか……」
「お、やっと納得したか?じゃあ決まりな。双方合意、めでたしめでたし」
「いえいえいえ!何も解決してませんし、それに」
「細かい話は後にしよーぜ。それよりシチューおかわり」
ズイッと差し出されたお皿を思わず受け取って、私はふいに思ってしまった。社長と暮らす気も、飼う気ももちろん無いけれど――自称ペットを名乗るなら、もうちょっと飼い主に忠実に躾け直された方がいいんじゃない?なんて。
***
「勘当するにしてもパンツぐらいは寄越せってジジイに連絡したらさ、着替えだけは持たせてくれたんだ。つっても下着とルームウェアだけだけど」
食事を終えると相変わらず勝手にシャワーを浴びた結城社長は、ゴキゲンそうにそんな事を言いながら部屋へ戻ってきた。昨日と違ってすっぽんぽんタオル姿ではなく、Tシャツの上にアクアグレイのカーディガンを羽織りウールのイージーパンツを履いていて、とりあえずまともな着衣をしてくれてた事に安心する。
けれど、社長は濡れた髪をタオルで拭きながら私のベッドにどっかりと座り込み「明日も忙しいなー」なんて零しながらノートパソコンを開き出した。その姿を見て私に一抹の不安が過る。
「……社長。もしかして、今夜も私のベッドで寝るつもりですか?」
「うん?他にどこで寝ろと?」