ワンルームで御曹司を飼う方法
画面から目を離さないまま平然と答えた社長の言葉を聞いて、私は密かに眉をしかめてしまった。今夜も泊める事を許したのは私だけど、さすがに2晩連続でベッドに入られるのは抵抗がある。結城社長は清潔感は問題ないけれど、それでも自分の寝床に男の人の香りが染み付いてしまいそうでいやだ。
「お願いですから今日は布団で寝てくださいよ。そこは私の寝床なんですから」
「ああ、宗根もベッドで寝たいのか。そんじゃ半分使って寝れば?俺壁際ね」
私の必死のお願いにも関わらず返ってくるのは斜め45度の答え。なんで共有するって結論に辿り着くかな。そこまでして床に敷いた布団で寝たくないのか。
けど、食事は出してもシャワーは貸しても、これだけは私も我慢したくない。……ので、粘って説得する。
「私のベッドに男の人が入る事に抵抗があるんですよ」
「気にしぃだな宗根は。男って考えるなって言ったじゃん。ペットと思えば気になんないぞ、ワンワン」
く、悔しい。あー言えばこー言う。パソコンのキーボードをカチャカチャ打ちながら結城社長はこちらも見ず、テキトーな答えをおどけた口調で返す。
言い負かせる気がしなくて諦めようかと溜息をひとつ零したけれど。
「……ペットなら飼い主の言うこと聞いてよ……」
ボソリとなげやりに吐き出した独り言に、結城社長が驚いた表情をしてパッと顔を上げた。それを見て一瞬(あ、しまった。社長に失礼なこと言っちゃった)と焦ったけれど、社長は少し考えるそぶりを見せると
「それは一理あるな」
そう言ってパソコンを抱えたまま素直にベッドから降りてきた。
「え、あ、あのすみません、あの、失礼なこと言っちゃって!」
あまりに意外だった社長の行動に私の方が驚いてしまい、ペコペコと頭を下げる。けど彼はクッションに腰を降ろしなおすと私に向かってクッと口角を上げて微笑んだ。