ワンルームで御曹司を飼う方法


「いいよ、宗根の言ったこと間違ってねーし。それにほら、早速練習の効果出たじゃん?良かったな、俺のおかげだぞ」

 ……あれ。社長、私の気弱な性格治すって本気だったんだ。苦し紛れの出任せかと思ってた。

 初めて私の意見を尊重してくれた社長を、ちょっとだけ見直してしまう。この人、横暴だけどちゃんと人の事を考えてくれる気持ちもあるにはあるんだな、なんて。

 なんだか嬉しくなって自然と笑みが零れてしまった。あの傍若無人の御曹司さまに、ちゃんと意見を通せた自分も褒めてあげたい、かも。

「……ありがとうございます。ベッド取っちゃってゴメンなさい、布団すぐ敷きますね」

 こんな目茶苦茶な男性と一緒に暮らす事も、ましてやペットとして飼う事も、やっぱり有り得ないけれど。……でも、ちょっとだけ悪くないな、なんて私はうっかり思ってしまった訳で。

 けれども。

「ところでさ、喉渇いたんだけどホットワイン作ってくんない?ミディアムボディで、スターアニス嫌いだから抜いてね」

 やっぱり御曹司さまは御曹司さまだ。ナチュラルな彼のわがままに、私はさっきまでの感心をクリアに取り消した。

「ワインなんてうちには無いんですけど……」

「そうなの?珍しいね。じゃあラムでいいや。温かくして甘くして」

「ラムもありませんよ。そもそもアルコールの買い置きが無いんです」

「えっ!なんで?宗根ふだん何飲んで暮らしてんの?」

 ……この生活ギャップ。やっぱり一緒に暮らすのは絶対無理、なんて考えながらも。

「家でお酒を飲まないだけです。ホットミルク作ってあげますから、今日はそれで我慢して下さい」

 そう言ってキッチンスペースへ向かった私は、この偉そうなペットのお世話を焼くことに抵抗がなくなる日が近い予感がしていた。

 
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