ワンルームで御曹司を飼う方法
「あー!この人!昨日宗根さんと一緒だったイケメン!」
結城社長の顔を見た狩野さんが驚きのあまり、思いっきり社長を指差して叫ぶ。気持ちは分からなくないが無礼千万だ。そしてそれを見た工場長が大慌てで彼女の手を押さえ込んだ。
「こら!失礼な事をするな!こちらは結城食品グループ次期会長で『ファストフーズ・キッチン』社長の結城充様だぞ!」
小狭い廊下に響き渡った工場長の説明に、狩野さんはじめその場に居た従業員たちが「えええええええええ!!!」と驚声をさらに響き渡らせる。
「え?え?なんで?じゃあなんで昨日宗根さんと一緒にいたの?」
「宗根さん知り合いなの?」
「宗根くんと個人的に面会に来られたとの事だが、こ、心当たりがあるのかね?」
疑問と好奇心の渦中にさらされ、私はもうどうしていいか分からずただ冷や汗を流す事しか出来ない。なのに、問題を引き起こした本人はケロッとした顔をして隣に並ぶと、まるで仲良しとでも言わんばかりに私の頭をクシャクシャと撫でた。
「まあね。色々あって俺、今こいつんちに住んでるから」
ものすごーく無責任で空気の読めない発言に、その場が絶叫に近い驚声に包まれたことは言うまでも無い。
私は、可愛らしい眼を皿のように開ききってる狩野さんや、口が開きっぱなしになってる兵藤さんや、軽率な主の行動に頭を痛めてそうな秘書の人たちの顔をぐるりと見回して、冷や汗の滲む額を押さえてうなだれるしか無いのだった。