ワンルームで御曹司を飼う方法
想像よりフレンドリーな返しを受けた事で壁を感じなくなったのか、ふたりは緊張を解きますます好奇心を剥き出しにした。
「あのお、聞いてもいいですか?結城社長って宗根さんとお付き合いしてるんですか?」
「馬鹿、失礼な事聞くなよ。それより、俺、会社経営に興味あるんですけど、結城の経営戦略とか教えてもらえませんか?」
先を争うようにして尋ねるふたりに、社長がいつものようにのらりくらりと答えようとした時だった。秘書の人達が一斉に時計や持っていた端末に眼をやり、その中の1番偉そうな人が会話に割って入る。
「社長、ヘリの準備が出来たそうなので出発致しましょう」
「ん、もうそんな時間か」
どうやら緊急招集会議から逃亡の時間は終わったようで、従来のスケジュールに戻った社長はソファーから颯爽と立ち上がる。その姿を見て狩野さんと三沢さんが実に残念そうな表情を浮かべた。
これ以上余計な事を喋られても私や秘書の人の肝が冷えるばかりだったので、密かに安堵の溜息を着く。けれど、社長はパーテーションの前で足を止めるとしょんぼりしているふたりに向かって声を掛けた。
「俺忙しいから行くけど、お前ら話聞きたいんなら宗根の家来いよ。今夜は9時には帰るから」
「はぁあ!!?」
社長の発した言葉に耳を疑いながら眩暈を起こす。部屋の主である私の許可も得ずいきなり客人を招く非常識ぶりに、またもやドッと冷や汗が出た。
「こ、こ、困ります!何言ってるんですか!」
「いいじゃん別に。どうせお前ら友達なんだろ」
「えっ、友達っていうか」
ほとんど会話したことも無いのに友達とはとても言い難く口篭っていると。
「そう!友達です!ね、宗根ちゃん!だから家行ってもいいよね!?」
どうやら狩野さんも人を強引に巻き込むタイプらしく、無理矢理なスキンシップで肩を抱かれ突然の友情を育まれた。