ワンルームで御曹司を飼う方法
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その日は勤務が終了するまで色々な人から質問攻めにあった。同居してる事を社長自ら暴露してしまったので、もはや変に隠すほうが余計な噂が立つと思い私は素直に現状を話した。「社長との生活ってどんな感じ?」だの「あんなカッコイイ人と暮らしてドキドキしない?」なんて問い掛けをなんのかんの交わしながら勤務時間は終わったけれど、騒動はまだまだ続くのだ。なんたって社長が勝手に我が家にみんなを招く約束をしてしまったのだから。
「宗根ちゃん!このまま宗根ちゃんち行っていい?」
「晩飯は手土産代わりに俺たちが何か買ってくからさ」
「ごめんね宗根さん、急に押しかける事になって」
もはや私は覚悟を決めて、帰路を着いてくる狩野さんたちに不器用ながら笑顔を作って頷いた。しかし、更に予想外な事が起こる。
「ねえ宗根さん、私たちも行っていいかな。私、前から結城コンツェルンに興味あって。結城円蔵の著書『財閥を背負う者』も持ってるぐらいなんだ」
「長居しませんので、少しだけ結城社長とお話させて下さい」
だ、誰だっけ。確か経理の派遣の人だった気がする。面識の無い人にいきなり頼まれて面食らったけど、狩野さんたちは良くってこの人達はダメだなんて線引きするのも躊躇われて、首を縦に振ってしまう。
そんな調子で客人は更に増え、なんとあのせまーいアパートに合計5人ものお客さんが来訪する事態となった。……全員入れるかな。
帰りの道すがら、みんなはあれやこれやとお店に立ち寄り食べ物と飲み物をたんまりと買い込んだ。そうして歩いて20分の私のアパートに着くと、狩野さんをはじめ「おじゃましまーす」と続々と上がりこんでいく。
最後に部屋へ入った兵藤さんがみんなの靴を揃えながら
「急にこんなに上がりこむ事になっちゃって本当にゴメンね」
と、私をとても気遣ってくれた。うーん、やっぱり兵藤さんってイイ人だな、と胸が少し安堵で落ち着く。こんな沢山のお客さんを迎えるなんて初めてで、半ばパニックになっていたけど彼女がいてくれるなら何とか乗り切れる気がして来た。