ワンルームで御曹司を飼う方法

「し、仕方ないじゃないですか。もうお金が無いんです。お給料日まであと2日、お米と自家栽培の野菜だけで何とか凌がないと」

 やっぱりこの同居生活の最大の難点は生活費の負担だ。つい先日送られてきた水道光熱費の請求が想像以上に膨れ上がっていた事に、私は白目をむいて気を失ってしまうところだった。貯金も使えるとこまでギリギリ切り崩してみたけど、やっぱりそんなのじゃ追いつかない。ワーキングプアの私が手もお金も掛かる社長を飼うなんて、やっぱり無理だったのではと頭を抱えてしまう。別に好きで飼ったワケじゃないけれど。

 そんな訳で、否応なしに突入した極貧生活。社長は「粗食にも程がある……」と悲しげにこちらを見つめてきたけれど、私はそれを無視して「いただきます」と手を合わせると、お味噌汁を啜った。

 実に質素な晩ご飯が終わると、ようやく社長は現状の問題を受けとめる事が出来たのか

「宗根、これは由々しき事態だな」

などと、お茶を啜りながら渋い顔をした。

「ようやく分かってもらえて嬉しいです。というワケでこれからは電気のスイッチはこまめに消してください。あと、シャワーは10分以内に切り上げてくれると嬉しいんですけど」

「えっ!まだ節約する必要があるのかよ!?……一応聞くけど、お前って給料いくら貰ってんの?」

「手取り13万です。ちなみにここの家賃は4万3千円です」

「随分安い家賃だな。てか、13万ならそんぐらい問題ないだろ」

「え?」

「えーっと、日給でそれなら月で250万は超えるだろ。俺、ずっと実家だから生活費なんて考えた事もないけど、光熱費って1ヵ月200万くらい掛かんのか?」

「日給じゃない!月給で手取り13万です!」

「…………え?月給?……あ、ジョーク?」


 聞き返した社長の声が虚しく静かな部屋に消える。真剣そのものな顔をした私と、信じられないものを見る顔で瞠目してる社長。今、日本で1番格差社会を痛感してるのは私たちだと云う絶対的確信がこの時のふたりにはあったと思う。

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