ワンルームで御曹司を飼う方法
身体を屈めて見ると、表面には『結城充宛』の紙が貼ってある。
「社長、何か荷物が来てますよ」
きっと、どこからか結城社長を見守っているSPの人でも置いていったんだろう。私は玄関のドアを閉めると、少し重みのある箱を部屋の中まで持って行った。
「俺に?なんだ?」
社長がさっそくビリビリとテープの封を開けると、中からは1枚の紙に3冊の本。それから1台のノートパソコンが出てくる。
ふたりして顔を見合わせ「なんだこれ?」と云った表情を浮かべたけど、私は同封されていた用紙を見て荷物の意味を理解した。
『スェーデン語…1P100円 ヘブライ語…1P300円 ラオス語…1P500円』
「これってもしかして……翻訳のアルバイトじゃないですか?」
「アルバイト?」
社長はキョトンとした顔をしてたけど、私は中に入っている謎の本を取り出し確信する。
「そうですよほら!何かよく分からない言語の本も入ってるし、これを訳してパソコンに入力してどっかに送る度に報酬が貰えるんじゃないかな。社長、この言語分かります?」
「スェーデン、ヘブライ、ラオス……一応ひと通り出来るけど……って、まさか俺がやるのか!?」
面白いほど社長は目を剥き驚くも、私には困窮した生活に一筋の希望が射した様にしか思えない。まさに天の助け。
「やった!これってきっとお祖父さまから『これで生活費を稼げ』って言う内職の差し入れですよね?ほら、この本120Pもあるから全部訳したら6万円ですよ!すごい!」
「ウソだろ~~……」
はしゃぐ私の説明を聞いて、社長はドタンと大の字になって床に寝そべった。そんなにショックだったんだろうか。