ワンルームで御曹司を飼う方法
「仕事して帰って来て更に翻訳までさせられるのかよ~」
確かにそう考えると可哀想だけども。
「社長、私もお手伝い……は無理だけど、協力はしますから。ちょっとずつでいいから頑張りましょう、まともなご飯のために!」
寝そべってるところに近付き励ますと、社長は「仕方ねえなあ」と溜息を吐きつつも起き上がった。
「毎日手作りの草がメシじゃたまんねえもんな。いっちょやるか」
「自家栽培の野菜って言って下さい、人聞きの悪い」
なにはともあれ、こうして結城社長は極貧生活を救うために翻訳の内職を始める事にしたのだった。
ありがたい事に翻訳のお給料は即日払いで、社長が夜にデータを送ると翌日には私の口座に『ミツル バイトダイ』と記された謎の機関から報酬が振り込まれている。
どうして私の口座番号を知ってるのかとか細々とした疑問はあるけれど、せっかくありがたく報酬が振り込まれているのだから、深くは考えない事にした。考えたところで『結城の力が働いてるから』としか結論は出ないし。
そんなこんなで危機的状況の貧困生活も救われ、食卓の上も安定し出して数日が過ぎた。
***
『へえ、じゃあ社長って15ヶ国語も話せるんだ』
「うん、凄いよね。将来どこの国と取引があるか分からないからって、子供の頃から世界中ホームステイさせられてたんだって」
『まさかそれが灯里んちの食卓を救う手立てになるとはね。世の中なにがどう役に立つか分からないね』
「あはは、本当だね」
『まあ良かったじゃない。灯里が飢え死にしないみたいで安心したよ』