ワンルームで御曹司を飼う方法
……自分でも驚くほど強い口調で返してしまった。けれど、私にとってイサミちゃんとの関係を否定されるのは全てを否定されるみたいで何より辛い。
今でこそ離れてしまったけれど、ずっと頼って委ねてきたのだ。ずっとずっと彼女は私の決定権で道しるべだった。そんな関係を今さら変えられる筈がないのに。
意思も精神力も強くて自分に絶対の自信がある社長になんかきっと分からない。イサミちゃんを自分の半身みたいに思ってる私の気持ちなんて。
強く言い返してしまった事に腹を立てたのか、社長は言葉こそ発さなかったけれど強い眼差しでじっとこちらを見ている。さすがにヒヤリと背中に冷や汗が伝った時だった。
社長は突然立ち上がるとテーブルに置いていたスマートフォンを操作してどこかへ電話をかけ出した。
「おい、今すぐ車とヘリとジェット用意しろ。南に7000だ。領空通過の許可も取れ。は?ジジイの許可?俺が直接取るからお前は5分以内に全部手配しろ」
なんの事やらさっぱり分からずポカンと見ていると、社長はさらにどこかへ電話を掛ける。
「ジジイ、G650飛ばすから許可出せ。あ?うるせえな、家賃だよ。家主にちょっくら家賃払ってやるんだよ。つべこべ言うと役員総会でクーデターぶちかますぞ」
なんか今すごい物騒なこと言った!聞いてはいけないと思いつつとんでもない会話が耳に入った気がして、私は青ざめた顔を慌てて社長から逸らす。
すると、電話を掛け終わった社長が座っていた私の手首を掴んで無理矢理立ち上がらせた。
「な、なんですか!?」
「行くぞ」
「行くぞって……ええっちょっと!なんなんですか!?」
社長は私の手首を掴んだままズンズンと歩き出し玄関へ向かう。そして、ドアを勢い良く開けば、すでに目の前にはリムジンと数人のスーツを着た人が頭を垂れて恭しく私たちを待ち構えていた。