ワンルームで御曹司を飼う方法
リムジンは10分ほど走ると何処かへ到着した。扉が開かれ促されるままに進むと、またもや驚くべき光景が眼前に広がる。
「へ……ヘリポート!?」
駐車場から直行のエレベーターに乗せられ開いた扉の向こうは、ヘリコプターがホバリングして飛行準備をしているビルの屋上だった。
「乗れ」
驚いて立ち竦んでいる私の手を強引に引いて、社長はヘリコプターへと乗り込む。言われるがままにシートに座りベルトを締めると、機体が高く浮上した。
「ひええええええ」
窓から見える景色はどんどん小さくなっていく。どうやらヘリポートは都内のオフィス街にあったらしい。上空からは夜景に変わったオフィスビルがキラキラと煌いて見えた。
当たり前だけどヘリコプターに乗るなんて生まれて初めての体験だ。さっきのリムジンといい、目まぐるしく襲ってくる非現実体験に頭が追いつかない。いったい私は何をやっているんだろう。
混乱している私をよそにヘリはあっと言う間に目的地へ着く。というか、ますます私を混乱に陥れる。
到着したのは……多分場所から言って東京湾だろう。そう、東京湾の海の上。なんと航空機の滑走路を携えた超大型船舶の上にヘリは着陸したのだ。
「な……なんですかこれ……空母じゃないですか……」
「空母じゃねえよ。うちのプライベート空港だ」
プライベート空港!!たぶん生まれて初めて耳にした言葉だ。そんな物がこの世に存在するのか。公営でも維持が簡単でない施設を、プライベートで容易く持てるものなのか。
26年間培ってきた常識が私の頭の中から消し飛んでいく。もはや失神寸前に呆然としている私を、社長はまたしても遠慮なくグイグイと引っ張っていった。それにしても私、トレーナーとイージーパンツにサンダル履きなんだけどいいんだろうか。社長もまあ似たような格好だけど。