ワンルームで御曹司を飼う方法
そして連れて行かれたのは旅客機を小さくしたような全長30メートルぐらいのジェット機。
「領空通過許可、入出国許可、問題ありません。ノーザンテリトリーまで直行可能です」
「最高速度で行け。明日も仕事だからな」
何やら理解できない会話を交わしてから、社長は私の手を掴んだままサクサクとジェット機内に乗り込む。これまた当然だけど、私にとっては生まれて初めての飛行機、しかもプライベートジェットだ。中の装飾がとても乗り物内とは思えず目を瞠るのも無理はない。
「すご……」
フカフカのソファーに大型のモニター、テーブルには花瓶に花まで飾られている。どこからどう見てもこんなの縦長のリビングだ。これが空を飛ぶと云うのだからもう訳が分からない。
「眠かったら寝ていいぞ」
そう言って社長が奥のカーテンを開けばベッドまで設置されてるではないか。リビングだけでなく寝室まであるなんて……私の部屋より広いんじゃないだろうか。
「眠くはないです。って云うか驚きの連続で寝れる訳ありません」
「あっそ。腹減ったら言えば飯でも飲み物でも出てくるからな。まあ俺には出してもらえないけど」
さっきリムジンで私だけお茶を出された事をいじけてるんだろうか。結城社長はそんな事を言って座席に腰を下ろした。
離陸が済みベルトを外すと、私はソファーに移動し窓からの景色をまじまじと眺める。いったい何処へ行くんですか?そう聞こうとした時、社長が立ち上がり私の隣に座ると先に会話の口火を切った。
「なあ宗根。俺はさ、お前と会ってまだひと月だし、お前が何を考えてどうやって生きてきたかなんて全然分かんねーよ」
突然さっきの言い争いの続きを紡がれて、身体がドキリと緊張を走らせる。やっぱり怒らせたんだろうか。そう思ってヒヤヒヤしていたけど。
「でもさ、お前が自分で自分の足引っぱってんのだけはよく分かるよ」
思いもかけなかった厳しい一言を言われて、私の中に少しだけ反抗的な気持ちが生まれる。