ワンルームで御曹司を飼う方法
4・充monologue
【4・充モノローグ】
視野を広げ文化を学びコミュニケーション力を向上させるという名目で、子供の頃から世界中を飛び回り、あちっこちでホームステイさせられた。だから、俺にとって他人との同居生活なんか慣れっこの筈だった。
どんなに仲良くなっても、そこに余計な情は湧かない。
何をするにも俺の行動原理は、ビジネスのため、結城のため、俺のためだったのだから。その妨げになるものには一切興味は無かったし、むしろ邪魔だとさえ考えていた。
なのに、だ。
ふと気付けば俺は一生懸命アルバイトをして生活費を稼いでるし、おまけにたかが口論の末にプライベートジェットまで動かしている。
そんなことをして一体俺に、結城に、何の得があると言うのか。
宗根の食卓が寂しくなったからって問題はない。俺は会社でたらふく飯を食えばいいだけだ。
宗根がくだらない理由で臆病になってるのなんか放っておけばいい。それで俺が困る事なんか何ひとつ無い。
今までの俺なら絶対そうしていた。けれど――
オーストラリアに行った日の夜、帰宅していつもよりどこか元気な顔の宗根を見てホッとしてる自分に気付かされる。
――俺、ずいぶんお人よしが伝染っちまったみたいだ。って。
そんで、ジジイが俺に何を学ばせたくて勘当したのかもちょっと分かってきたよ。
けどな。
情を学んだ。ここで終わらせるべきだったんだ。
ジジイ、大失敗だよ。俺をここで結城に呼び戻さなかったのは。
情が深くなれば何に変わるかなんて――考えるまでもないほど容易い答えなのに。