ワンルームで御曹司を飼う方法
「なんだその反応。お前、結婚したい男でもいんのか?」
「な、なんで急に私の話になるんですか!」
「分かりやすっ。へえ、宗根っちってば彼氏もいないくせに結婚したい男はいるんだ~?」
自分の結婚話は嫌々するくせに、社長はどういう訳か私の結婚話には面白そうに絡んでくる。
「どれ、この社長さまが聞いてやっから言ってみ?ほれほれ」
意外と下衆いな、社長ってば。他人の恋愛事なんか興味ないと思ってたのに、からかう気満々な笑みを浮かべているではないか。
「別に……いませんよ、そんな人」
「またまた、分かり易い嘘ついちゃって。じゃあ俺が当ててやろうかな。同じ会社の奴か?ん?」
「だから違いますってば!」
必死になって否定する私に、社長は楽しそうな笑みを浮かべていたけれど、いきなりハッと何かに気付いたような顔になった。
何事かと思ったら。
「お前まさか……イサミとそういう関係だったとか言うんじゃ無いだろうな?」
「ちがーう!!」
よりによってとんでもない事を言い出されてしまった。なんて発想だ。ありえない。
「だってお前いやにイサミに執着するしさあ。まあ、そういう恋愛も俺はいいと思うよ?」
「だから違いますってば!イサミちゃんはただの幼なじみの親友です!」
けれど、否定しながら私の顔は赤くなっていたと思う。理由はもちろんイサミちゃんの事じゃない。『幼なじみ』のキーワードが本当に好きな人を掠ったからだ。
「なーんだ。まあいいや、恋愛相談ならいつでも乗ってやるから言いたくなったら言えよ」
ひとしきりからかい終わって気が済んだのか、社長は再び背を向けるとパソコンに向かってキーボードを打ち始めた。
私は蓮のことがバレなくて良かったと密かに安堵の溜息を吐く。けれど、遠くにいる初恋の人の事を思い出して高鳴った胸は、なかなか治まってはくれなかった。