ワンルームで御曹司を飼う方法
やっぱり私は臆病だと思う。好きだと告げた声は震えていたし、今さら後悔もしてる。
一生告白なんかしないで静かに恋心を抱き続けてるつもりだったのに、って。
けれど、告白した事で蓮との関係が壊れてしまうかもと怯えていた今までの自分には叱咤したい。そんな事は絶対無いのに、あなたは蓮の何を見てきたの?って、臆病過ぎた自分を叱ってやりたい。
どんな気持ちをぶつけたって、蓮は蓮だ。きっと私から離れたりしない。
私の弱いところを認めてくれた彼は、きっとどんな私だって嫌いになったりしない。きちんと偽らず向き合えば。
「……そんな気は、してた」
蓮は一度逸らそうとした目線を、けれどちゃんと私に向けなおしてからそう言った。
その答えに、どこか私は安堵を覚える。ああ、やっぱりって苦笑いしたくなる。
少しだけ流れる沈黙。この続きはどちらから言葉を紡ぎ出すべきかお互い迷ってる。そして、「……そっか」と小さく先に零したのは私のほうだった。
「灯里は俺のことが好きだから彼氏作んないのかなって、なんとなく思ってた。だから、灯里が彼氏できるまでは俺結婚しないつもりでいた」
ああ、なんて優しい失恋なんだろうって、心が温かい切なさで満たされていく。
不器用だけどどこまでも幼なじみの私を大切にしてくれる蓮。けれど。自分の結婚を犠牲にしてまで私の幸せを願ってくれるのに、その相手に私を選ぶ事はないんだ。
…………分かってる。分かってた。この恋が実らない事なんて。そしてきっと、そんな私に罪悪感を抱いてる蓮の事も、私はとっくに気付いていたんだ。
ごめんね、蓮。私どこまでも優しいあなたに甘えてた。私に感じてくれている申し訳なさに、きっと卑しい期待を抱いてた。