ワンルームで御曹司を飼う方法
「…………幼なじみなんです。蓮って言って、イサミちゃんと同じでいつも私の心配してくれて、優しくて、子供の時からずっと側に居てくれて」
「……うん」
唐突に話し出した私の言葉を、社長は少しだけ手の動きをゆるめて静かに聞き入ってくれた。
「……初恋だったんです。高校生の頃、彼を好きだって気付いて。それから10年近く……今日までずっとずっと」
「……うん」
「でも、私臆病だったから。告白なんかして仲のいい幼なじみの関係が壊れるのが嫌で、ずっと気持ち伝えられなかった。でも、それでもいいって思ってた。いつか蓮が結婚しちゃっても、私はひっそりと彼を想い続けるって。私の恋はそれでいいって」
「……うん」
「でも……さっき蓮に社長のこと誤解されて、一生懸命弁解して、自分のズルさに気付いたんです。いつだって偽り無く私と向き合ってくれて弱いところさえも受け入れてくれていた彼に、私は自分が傷付きたくないからって気持ちを隠して、社長の事も隠して、すごくズルイなって」
「……うん」
「それなのに私、心の何処かでずっと期待もしてた。きっと私の気持ちに薄々気付いてる蓮が、いつか同情して振り向いてくれるかもしれないって。……すごく卑しい」
「……うん」
「だから、終わりにして来ました。臆病でズルイ自分も、言い訳ばっかりの不毛な恋も、きちんと決別してきたんです」
「…………うん」
「褒めて下さい、社長。私ちょっと成長出来たと思います。ひとりでちゃんと自分の気持ちを伝えて、ちゃんと失恋してくる事が出来たんです。……少しだけ、強くなれたんです」
気丈に喋っていたつもりの声が最後にふっと緩んでしまった瞬間、被せられていたタオルが退けられ、大きな手が直接私の頭を優しく撫でた。
顔を上げて見た視界には、優しくて、けど少しだけ困ったように微笑む社長の姿が。