ワンルームで御曹司を飼う方法
「よく頑張ったな。偉いぞ。ちゃんと強くなれたじゃん」
いつもと同じ、繊細とは言いがたい褒め言葉。なのに私はそれが嬉しくて嬉しくて、胸が痛いほど詰まっていく。
……あ、ダメだ。泣いてしまう。
自分の涙腺が緩むのが分かった。泣いてしまったら抑え込んでいた失恋の痛みがきっととめどなく溢れてしまう。それを社長にぶつけるのはなんだか悪い気がして、我慢したかったんだけども。
泣くのを堪えようとキュッと唇を噛みしめた瞬間――私の身体はふっと温かい感触に抱きすくめられた。
今までで一番の接近距離。きっと、心も身体もこんなに寄り添ったのは初めてだから驚いてしまう。
抱きしめた、というより抱き寄せられたと言った方がしっくり来る。まるで私が泣くのを見ないようにしてくれてるかのように、顔を優しく胸板に押し付けられ、包むように優しく背中を撫でてくれた。
「……なんで抱きしめるんですか」
「ペットセラピーってやつ。黙って大人しく癒されな」
……そっか。そう言えばペットって、こんな風に役に立つんだっけ。
優しい手に素直に抱き寄せられながら、私は今ここに彼がいてくれて良かったと思った。癒してくれる温もりがあるから、私はやっと素直に泣ける。私はきっと前に進める。