師匠と山猫(仮)
「今回のは少し威力が強すぎましたね、師匠」
ぴょこんと、男の横に子供が現れた。
男はぶすっとして、その子供の頭をワシャワシャとかき乱した。
「あれじゃ楽しむもんも楽しめん」
「はぁい、改良します」
残念そうに呟くと、師匠と呼ばれた男は腰につけた銭袋に手を触れた。
「シケてやがる」
「あまりお金持ちじゃありませんでしたね、あの殿様は」
「土地なんているかっつの。銭を寄越せ銭を」
どうやらどこかの名のある武将になるつもりは、この男にはないらしい。
そうやってふらふらと戦地に赴いては、気が向いたほうの軍勢に加わり、人を斬って帰って来る。
昨日の味方が今日の敵、などということもよくあること。
ただ男が戦地に赴けば、確実に勝利を、そして大量の死をもたらす。
そんな「死神」と呼ばれる男が、ここ最近戦地に子供を連れて来るという。
その子供はすばしこく身軽で、飄々と戦地を走り回っては、火薬を扱い敵も味方も混乱させる。
そんな子供をいつしか侍は、その猫のような珍妙な髪の色から「山猫」と呼んでいる。
「帰るぞ、タマ。」
「あい」
タマと呼ばれた子供は、そう返事をして大きな男について行った。