ワンダーランドと春の雪
振り向くと、一人の女の子が私の腕を掴んで膨れながら立っていた。
背は低いけど同い年くらいかな。
青いショートヘアに赤いバラの髪飾りがよく
にあってる。
可愛い子なんだけど、その人懐っこそうな
二つの大きな赤い目と口から覗いてる尖った牙のようなものから、彼女が人ではないことがうかがえる。
「私のことだったの?! 」
「あなたの他に誰がいるのよ~!あっわたしは
ローズ・マリー!気軽にマリーって呼んでね~っ!あなたは? 今初めてあなたの可愛さに
惹かれて話しかけたわけなんだけど、違う
クラスの子? または新入生? 」
よく喋る子だなと思いつつも、
私はマリーちゃんの質問に答えることにする。
「春花ミライだよ。ここの生徒じゃないんだけど、イズミくんの知り合いの人に
会いに来たんだ」
私がそう言うと、マリーちゃんは不思議そうに
首を傾げた。
「ミライちゃんか~!春花って、春の花?
タンポポ? チューリップ? あっもしかして
桜かな~? ……イズミって人は知らないけど、生徒じゃないならまずは校長先生に会うと
いいよ~! 」
「校長先生? 」
「うんっ! バエル先生っていうのよ~!
このホームを真っ直ぐ歩いていけば校門が
あるから、そこの門番のガーゴイルくんたちに話せば連れて行ってくれると思うよっ」
マリーちゃんはそう言って、両手で
ガッツポーズをしてみせた。
「ここの先生たち、見た目は怖いから
頑張ってね!! 」
「それって性格は優しいと思ってていいって
ことだよね?! 」
そのときホームに次の汽車が汽笛を鳴らしながら走ってきて、マリーちゃんはそれに乗り込んだ。
そして彼女は手を振りながら小さい声で、
「ミライちゃんって人間だよね? いつかまた
会ったら、そのときは色々お話きかせてねっ!」
と私に囁いて、にっこりと微笑んだ。
私はマリーちゃんのその言葉に酷く驚いて
何も言えないでいると、汽車がまた汽笛を鳴らし、煙を上げながら動き始めた。
「あ、ありがとう! 」
出来るだけ大きめの声で言ったけど、
マリーちゃんに聞こえたかどうかはその後も
分からないままだった。