ワンダーランドと春の雪
◎三章 マーモンの城
ラッキースケベ
ふとそのとき
私の手の上に何か白い物が落ちるのが見えた。
手の上にふわりと舞い降りた冷たいそれは
落ちると溶けて水になってしまった。
空を見上げると
同じような白い物が次々と降ってくる。
「雪……?」
どうりでさっきから寒いはずだ。
「ミライちゃん、校章を触ってみて」
そう言ったマリーちゃんはいつのまにか
制服の上に黒いダッフルコートを着ていた。
その上に赤いマフラーまで巻いている。
言われたとおりにブレザーの襟元に付いている校章に手を触れると、私の体をオレンジ色の
光が包み込んだと思ったら気が付くと、
マリーちゃんと同じコートを制服の上に着ていた。
マリーちゃんだけでなくジュリーちゃんも
リルガくんもミレアくんも、いつのまにか
同じコートを着ている。
マフラーの色はそれぞれ違うようだ。
「これって魔法?」
「便利でしょ~!校章に服を作る魔法が
刻んであるんだよ!触って着たい制服をイメージするだけ!」
なるほど、すごい。
これは私も欲しい。
龍に乗れただけでも感動なのに。
「ついに辿り着いちまったか……」
ミレアくんが緊迫した声音で呟いた。
降りしきる雪空の下。
目の前には大きなお城が不気味に
そびえ立っていた。
建物の壁は異常なまでに黒く、
窓が極端に少ない。
「いやー相変わらず陰気な場所だね」
「え~っ!リルガくん、来たことあるのっ?」
「うん、というかここが俺の実家なんだけどね」
ここにジョニーくんがいるのか。
イズミくんが言っていた、私の協力者かもしれない人。
そして本物の鬼。
ジュリーちゃんが私に声をかけた。
「ミライ、心の準備はいい?」
「大丈夫だよ」
私は頷いて、イズミくんに渡された銀の指輪を
指にはめたのだった。