ワンダーランドと春の雪
◎三章 マーモンの城

ラッキースケベ






ふとそのとき

私の手の上に何か白い物が落ちるのが見えた。


手の上にふわりと舞い降りた冷たいそれは
落ちると溶けて水になってしまった。




空を見上げると

同じような白い物が次々と降ってくる。




「雪……?」



どうりでさっきから寒いはずだ。




「ミライちゃん、校章を触ってみて」



そう言ったマリーちゃんはいつのまにか
制服の上に黒いダッフルコートを着ていた。

その上に赤いマフラーまで巻いている。


言われたとおりにブレザーの襟元に付いている校章に手を触れると、私の体をオレンジ色の
光が包み込んだと思ったら気が付くと、
マリーちゃんと同じコートを制服の上に着ていた。


マリーちゃんだけでなくジュリーちゃんも
リルガくんもミレアくんも、いつのまにか
同じコートを着ている。

マフラーの色はそれぞれ違うようだ。



「これって魔法?」


「便利でしょ~!校章に服を作る魔法が
刻んであるんだよ!触って着たい制服をイメージするだけ!」



なるほど、すごい。

これは私も欲しい。
龍に乗れただけでも感動なのに。






「ついに辿り着いちまったか……」



ミレアくんが緊迫した声音で呟いた。



降りしきる雪空の下。

目の前には大きなお城が不気味に
そびえ立っていた。

建物の壁は異常なまでに黒く、
窓が極端に少ない。





「いやー相変わらず陰気な場所だね」


「え~っ!リルガくん、来たことあるのっ?」


「うん、というかここが俺の実家なんだけどね」




ここにジョニーくんがいるのか。

イズミくんが言っていた、私の協力者かもしれない人。

そして本物の鬼。



ジュリーちゃんが私に声をかけた。



「ミライ、心の準備はいい?」




「大丈夫だよ」




私は頷いて、イズミくんに渡された銀の指輪を
指にはめたのだった。



< 49 / 67 >

この作品をシェア

pagetop