ワンダーランドと春の雪
……何だか今日は、ラッキースケベ(?)が多いな。
信じてもらえるかは別として、帰ったら
ユキちゃんに自慢しよう。
建物の中は意外と小綺麗で、
想像していたものとは大分掛け離れたものだった。
床は例外なく白く、
薄暗い中に小さな蝋燭の炎が揺れている。
牢屋の前を歩くたびに
いくつもの視線を感じる。
このどこかにジョニーくんがいるのかな。
彼の見た目は銀髪でツノが生えてて、
薄紅色の肌をしたヤンキー風の男の子だと
マリーちゃんは言っていた。
そんな目立つ人がいたらすぐに見つかるはず
なんだけど……。
牢屋の中にいるのは小学生くらいに見える
小さい子や私と同年代くらいの人まで、
幽閉されている全てのゾンビが子供だった。
皆それぞれ服装は違えど、顔や手足にある
縫い傷や包帯なんかは全員の見た目に共通している。
“生前に悪いことをして死んだ子供たち”
ふと、そんな言葉が私の頭の中をよぎった。
ここにいるゾンビたちは皆そうなのだろうか。
私よりもずっと年下のような子だっているのに。
彼らは生気の無い目で、絶えず私を凝視してくる。
騒いだり暴れたりせず、ただひたすらこっちを見つめてくるだけ。
充分異様な光景だけど、まだ怖くないかな。
結局ジョニーくんらしき人は見つからず、
途方に暮れながら奥まで進んで行くと
やがて上の階へと続く階段の前にたどり着いた。
他に道は無いし……行くしかないか。
更に上に行けそうな階段があり、そこには
“立ち入り禁止”の黄色い柵が取り付けてある。
もしこの階でも見つからなければ行ってみよう。
上の階は下と同じように牢屋が続いているけれど、中にいるゾンビたちの雰囲気はまるで
正反対だった。
「誰か歩いてくる!新入りかな?!」
「待てよ、こいつ人間じゃねえか!しかも女だ!!」
「本当だ……細くて綺麗な脚……」
「いい匂いがする。人間ってこんな美味しそうな匂いするっけー?」
牢屋のあちこちからそんな声が聞こえてくる。
どれも私とそんなに年の変わらなさそうな
子供たちばかり。
そんな子たちが、まるでご馳走を見るような
ギラギラとした目で私を見てくる。
「早くこっちにおいで。腕は僕がもらう」
「何言ってんだ、あの子は私が食うんだよ。
お前から殺すぞ!」
「見てるだけでいい。フィギュアにして
舐め回したい。JK最高」
「すげえ人間じゃん!!美味しそういい匂い!
ねえねえ触らせて!!!お願い髪の毛触らせてよねえねえ!!キスキス!キスさせてよ
ねえねえねええええ!!!!!」
最後の人うるさいな!
彼らが動くたびに、手錠や鎖がジャラジャラと揺れる音がする。
傷だらけの手が今にも私に届きそうだ。
下の階とは随分テンションが違うけど、
もしかして危険度とか異常性なんかで分けられてるのかな。
だとすると更に上の階に行くと、もっと
ハイテンションになるのだろうか。
そう考えただけでも不安になってくる。