ワンダーランドと春の雪
「痛っ!先輩、卒業証書のケースが背中に
刺さって痛いです!あと卒業おめでとう
ございます!!」
「あはは、ごめんね」
そう言って
先輩は笑いながら私から手をはなした。
この先輩や、他の人から見た私はきっと
卒業式を終えたあとのお別れイベントを
遠くから冷めた目で見てる
冷たい子にしか思えないだろうな。
リコ先輩は明るくて空気が読める上に、
周りの人を巻き込んで楽しむタイプの人だから中学の時から今までお世話になった人だった。
「先輩も、もう大学生ですか」
「ふふ、そうだね。まだ全然実感わかないん
だけど」
「ちなみに、どんなところなんですか」
そう尋ねた瞬間
私は しまったと心の中で呟いた。
何も知らない先輩は
「外国語の勉強をするんだ」
と 親切に答えてくれた。
「へえ……やっぱり、彼氏さんが海外に
行くから?」
「うん……それもあるけど中学の時にね、
すごく遠い所に住んでる人と
仲良くなったの。今は全然会ってないん
だけど、その人達の国では昔から戦争が
続いてて、沢山の人が苦しんでるんだって」
……あ、これ だめなやつだ。
「だから私は、世界で苦しんでる人達を
少しでも笑顔にしたいんだ。そのためには
まず、言葉の勉強かなって」
とても嬉しそうに
晴れやかに夢を語る先輩の言葉の一つ一つに、
何だか私は涙が出そうになった。