ワンダーランドと春の雪
「はあ?! 」
そんな間抜けな声を出したのは他の誰でもなく、私自身だった。
「なァお前、名前は何て言うんだ? 」
「……ミライ」
私の名前を聞いたリッキーは、ほんの一瞬だけ驚いたような表情を見せた。
「……ハハ、名前まで似てんのな! 」
彼はジョニーと似た反応をして、こう言った。
「ってことでさァ! ミライをオレにくれたら、
お前らに出口の場所を教えてやるよ!
悪い話じゃねェよな?! なァ?! 」
……何だかどこかの悪役が言いそうな台詞だ。
こういう台詞を言う奴の要求は大体通らないことが多いんだけど、今はそうも言ってられないみたいだな。
仮にジョニーたちがリッキーの言う通りに
したところで、彼が本当に出口を教えてくれるとは限らないし、その逆の展開になったとしても、私を待つシナリオは一つしか無いと思う。
だったらどっちの選択肢も選ばずに、何とか
隙をついてリッキーから離れられたらいいん
だけど……何か良い方法は無いものか。
―― と、そのとき。
「何が“ミライをくれ”だ」
そう言ったのはジョニーだった。
彼の殺気を孕んだ二つの目は真っ直ぐに
リッキーの姿を映しており、私でも身震いしてしまうほどの迫力がある。
「誰がてめえなんかにミライをやるか!
ふざけんな!! 」
ジョニーは鬼のような形相で(既に鬼だけど)
そう叫んだ。
「お前の言う通りにしたら俺の負けみたいになるからムカつく。ミライは絶対に渡さねえ!! 」
私な何だか嬉しいような切ないような、
複雑な気持ちだった。
ジョニーは馬鹿だから、きっと私とミラクを
重ねてそう言ってるんだと思うけど、
でもその反面。
私のことを見捨てずに、リッキーに牙を剥いたことは確かだった。
「ギャハハハ! そう言うと思ってたぜェ?!なら
どーすんだよ?! 力尽くでオレを黙らせて
みるかァ?! ミラクが死んだ時みてェになァ!
ギャハハハッ!!!」
「うるせえ! ミラクのことは関係ねえだろ!! 」
リッキーは私から手を離し、殴りかかってこようとするジョニーを迎え撃つ体勢をとる。