ワンダーランドと春の雪
そして私は俯いて一言。
「……叶うと、いいですね」
言っておくけど、
涙が出そうになってるのはリコ先輩の夢に
感動しているわけでは断じて無い。
確かに素晴らしい夢だとは思うし
応援したいとも思う。
けれど
誰か他の人の夢や特技や
やりたいことの話を聞いてると。
まるで自分が何も出来ない奴だと言われてる
ように思えてきて。
やりたいこともないし
夢も無い。
何も無い自分が嫌で、泣けてくるだけなんだ。
「えっまさかミライ泣いてる?!」
「な、泣いてませんよお!!」
リコ先輩の
また会いに来るから泣かないで、なんていう
需要の無い慰めの言葉を聞き流していると、
今度は同級生で同じく美術部の千香が
ケータイを片手に、私達のところへ走ってきた。
「二人ともこんなところにいたのね!
部活の皆で集合写真 撮りたくて探してたん
ですよ、先輩!」
千香は そう言って
リコ先輩の腕を引っ張った。
「ミライも!早く来なよ」
「うーん、私はやめとくよ。なんか
疲れちゃったし帰る」
「そっか、残念。写真、あとで
送るからね!」
私は頷いて千香とリコ先輩に手を振って
学校を出た。
私と同い年である彼女にも夢がある。
絵が上手くて子供が好きな千香は
保育士さんを目指してて、高校を卒業したら
その専門学校に入りたいらしい。
その他にも
私の周りには夢を持った人で溢れていた。
たまに将来やりたいことの話になったとき
そのたびに私は焦っていた。
何か好きなことを見つけなければ。
何かやらなくちゃ。
勉強しなきゃ。
だけど
何をしても長続きしないし
漠然と、何から始めたらいいのかも
分からないし
第一に、私は勉強が嫌いだった。
だから自分だけ皆から取り残されたような
気がして
何だか泣きたい気分になった。
先輩の卒業式が終わって明日は修了式。
春休みだ。
「春休み中には……せめて二年になるまでに
やりたいことが見つかるといいな」
私は帰り道、一人でそう呟いて
咲いてない桜の木を見上げたのだった。