指先に囚われて…
『まずは、三種の出汁巻き玉子のしらす大根添えです。出汁巻き玉子の中に、それぞれ刻み紅ショウガ、ネギ、柚子の皮を入れて作りました。それから…』
コトンっと、なるべくお皿の音をたてないように並べていく。
『ほうれん草のごま酢和えに、ささ身の塩タレ炒め…です。ていうか、お父さん私お客様に出しちゃだめなんじゃ…』
「美弦ちゃん、大丈夫。お客さんじゃなくて友人として来たことにすればいいんだからね」
「そうそう、いやぁでもさすが美弦。間違いなく俺の子だな」
芝田さんとお父さんはそう言って、箸を手にとり食べ始めた。
『夕さんも…お口に合うか分かりませんが、召し上がってくださいね』