指先に囚われて…
「やっぱり、まだ少し緊張しているね。よし、じゃあ今日は美弦ちゃんも緊張しなくなるぐらい、仲良くなれるようにするよ」
そう言うと、夕さんは胸のポケットから小さな手のひらサイズの用紙を取り出して、サラサラと何かを書き始めた。
「…はい、これ。俺の名刺。表に載ってるの番号は会社用のだから、裏にプライベート用のやつ書いたから、メールもね」
すいっと一連の流れのように差し出されたその名刺を私は反射で受け取ってしまった。
『へ、ぁ…そんなっ、いいんですか?私なんかに…』