【短編】はくだく【BL】
2月9日
「馨、ノート見せて」
「また授業中寝てたの?仕方ないなあ…」
「さんきゅ」
幼なじみの尊の笑顔に、不覚にもきゅんとする。
僕が女の子だったら間違いなく尊に惚れてるだろう。
しかし何故だか尊はモテない。モテるのはいつも僕の方。
それを尊は羨ましがったりからかったり。
僕にとっては尊の方が、僕よりずっと魅力的だと思うんだけど。
「僕が勉強できてよかったね」
「だな、馨みたいな幼なじみがいてよかったわ」
ほら、そうやってまた女の子が喜びそうなことを平気で言う。
「そういやもうすぐバレンタインだな」
「え?あ、ああ…そうだね」
「どうせ俺はまた母さんからの1個で、お前は大量なんだろうな」
僕は尊の言葉に少しドキッとした。
バレンタインに尊にチョコレートをあげようと思っていたからだ。
あくまでも、幼なじみとして。
「今年はたぶん、他の人からももらえるんじゃない?」
まだ言うのは早いだろう、と少し濁して言った。
「え?何?俺のこと好きな子知ってんの?ついに俺にも春到来?」
…わかってたよ、気付かないのは。
今までどんなギリギリのアプローチしても、なんのリアクションもなかったもんね。
「さあね」
「おーしーえーろーよー」
「もう授業始まるから席戻るね」
「ズルイぞ」
こんなやりとりをできるだけで今は満足しよう、そう決めたのにやっぱり進展させたいんだろうな、僕の本心は。