【短編】はくだく【BL】

 夕方、僕が家に帰ると言うと、尊はもう一泊していけと言った。

 僕はそれを丁重に断って、帰る用意をした。

「なあなあ、泊まっていけよ」

「だからさっきも断ったでしょ」

「今日はなんもしないから」

「そういうことじゃないの」

 尊は昨夜のようになるのが嫌で僕が断ってると思ってるみたいだ。

「じゃあ泊まったら、なんでもしていいから」

「じゃあ…やっぱいい」

 抱きしめて、と言うつもりだったがそれを言ったら泊まることになるから、言葉を飲み込んだ。

「じゃあ、なんだよ、言えよ」

「今日は母さんの誕生日だから、どんなに誘われても泊まれない」

「…なんだよ、だったら早く言えよ」

「そんなにしつこく言われると思わなかったから…」

「プレゼントは買ったのか?」

「うん、先週買った」

「ケーキは?」

「帰ってから作る」

「そうか」

 尊は納得したようで、もう誘ってこなくなった。

 最初から言っておけばよかった。

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