【短編】はくだく【BL】

「じゃあ、あとで馨んち行くな」

「うん、じゃあね」

 尊に手を振って歩き出す。歩いてるうちに怒りが湧いてきた。

 なんでだよ。いつもは僕と一緒に帰るのに。

 いつもは僕を待たせてでも一緒に帰るのに。

 今まではずっとそうだったのに、なんで今日に限って一人で帰らなきゃならないんだ。

 僕は尊に追いつかれないようにわざと早足で帰った。

 尊がいないからか、今日はいつもより寒く感じた。

 家に着いてしばらくたっても尊は帰って来なくて、1時間後、ようやく帰ってきた。

 知らない女の子と一緒に。

 窓から二人の姿を見て僕の思考が停止した。もう終わった。全て。

 だから先に帰っててほしかったんだ。

 最初から僕を追いかけるつもりなんてなかったんだ。

 これからは僕とずっと一緒にはいてくれない。悲しすぎて涙も出ない。

 二人は尊の家の前で少し話したあと、別れて女の子は元来た道を帰って行った。

< 6 / 36 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop