【短編】はくだく【BL】

 尊はため息をついて、えーっと、と少し考えるように呟いた。

「俺が先に帰れって言ったから?」

「そうじゃないけど…」

「じゃあなんだよ?なんで怒ってんの?」

「だから怒ってるわけじゃなくて…ただ…尊に、その、彼女ができたんなら」

「はあ?何言ってんの?殴るぞ?」

 尊が僕の言葉を遮って言った。電話越しに確実な殺意が伝わってくる。

「…え?なんで?」

「俺に彼女ができた?いつ?」

「だってさっき、女の子と一緒に…彼女じゃないの?」

「まさか。確かに告白はされたけど、俺のことよく知りもしないくせに知ったかぶった態度だったから普通に断った」

「何それ…バカじゃないの」

 内心僕はすごく安心した。よかった、まだ今の関係は続くんだ。

「うるせえな、モテるやつは黙ってろ。モテないやつはモテないなりにいろいろ考えてるんだよ」

「へえ、そう」

 嬉しくて少し笑いながら答えた。

「そういや、馨も彼女作らないよな」

「え?ぼ、僕は好きな人がいるから…」

 言ってから、口走ってしまったことを後悔した。

「馨、好きな人いんの…?どんな人?」

「そんなの、どうでもいいだろ」

「は?どうでもよくねえわ」

 尊はそのまま電話を切ってしまった。

 直後、家のインターホンが鳴る。ああ、なんてわかりやすい。

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