願い事を一つだけ。【短編】
時間が、矢のように過ぎていく。


水族館に行ってショッピングをして映画を見て。


初めてパンツスタイルのカジュアルな服を数枚買った。

青葉に選んでもらうのは始終ドキドキして、心臓がうるさく鳴る。


私は家ではほとんど着物か清楚なワンピースを着ているから、カジュアルな服を着るのは初めてだ。



「菖蒲。疲れただろーカフェあるよ」


私の足が少し疲れてきたなと感じ始めた頃、青葉が通りの一角を指差した。


よく気がつくんだなぁ…

「うん。行く。ありがと」


しかして私はカフェに入ったことがない。


生まれてから和菓子に囲まれて生きてきたから、洋菓子にはほとんどお目にかからなかった。


「何、菖蒲こういう店始めて?」


青葉が優しく私の顔を覗き込む。

至近、距離。


また胸がきゅうっとした。

最近のこの症状。病気?


「ん…和菓子屋さんなら行ったことあるんだけど」


「大丈夫。別に固くならなくていーよ、俺も和菓子屋なんてナチュラルに行かねぇし」


やっぱり優しい。

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