願い事を一つだけ。【短編】
なんで、胸がきゅうっとするの。


泣きたくなる時もあるの。


お母様たちと違って私に期待なんて1ミリもしていないだろう笑顔。


自分を隠せないことが、嬉しくて怖い。


「あーやめ。何にする?」

ハッとして差し出されたメニューを見、


「これがいいっ!」


紅茶のシフォンケーキとダージリンティーのセットにした。


青葉はブラッドオレンジのサイダーとビターのチョコアイス。


「甘いもの、好きなんだ?」


男の人なのに意外、とは思わないけど。


何せ私の周りの男性は間宮和菓子の社員ばかりで甘党揃いだから。


「好き」


にこ、と笑って言った青葉にまた胸が絞めつけられた。

クーラーの利いた室内なのに顔が火照る。


「そっか!!」


どうしたのか分からないけど私らしくもないトーンで声が出た。


「はは、菖蒲もしかして照れた?」


「なっ「好きだよ」


冗談かとまた青葉を見上げる。
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