願い事を一つだけ。【短編】
◆・◆・◆・◆・◆・◆・◆・◆・◆
「菖蒲、あんたそりゃ恋だわ」
前衛練習の途中、相談相手の朝美が素振りをしながら言った。
「恋?」
「そうでしょ。疑う余地ある?」
「恋ってもっと恥ずかしくて甘酸っぱいものだと思ってた」
「菖蒲のも充分甘酸っぱいけど!」
「そうかな」
「そうだよ…っと」
朝美は綺麗にランニングボレーを決めて、何だか嬉しそうに笑った。
「何?朝美」
「菖蒲もそんな時期が来たんだねーっ」
「うるさいなー。どんな時期よっ…ふぅ」
顧問の金岡先生のストロークがもろにストレートに来た。
男性のストロークは強い。
まあそれでもと難なく返したが、目の前に痛そうなボールが来るとやっぱり怖いな。
「でもさ菖蒲ー」
ふと朝美が顔を曇らせる。
「中原は気をつけな?女子とっかえひっかえしてんのよアイツ」
「知ってるよ」
同学年では有名な話。
だけどあの日の青葉の目に嘘なんて無かった……はず。
そう思いたい。
「まっ菖蒲に限ってそんなこたーないと思うけど…」
「私…好きだもん青葉。信じる。返事、頑張る」
「おうよ、頑張りな」
「本当に好きなの」
私が念を押すと、ちょうど玲子が捕り逃して飛んできたボールを朝美が渾身の力でスマッシュする。
「っはぁー!!この天然殺し!!ダメだあたし悶え死ぬわ!!」
「え、何言ってんの。死なないでよ!」
「あんたが殺したくせに」
「殺してない!」
恋愛相談は物騒に終わったけど……私は私なりに頑張ろう。
そう決意し、私はスマッシュをアングルに叩き込んだ。
「菖蒲、あんたそりゃ恋だわ」
前衛練習の途中、相談相手の朝美が素振りをしながら言った。
「恋?」
「そうでしょ。疑う余地ある?」
「恋ってもっと恥ずかしくて甘酸っぱいものだと思ってた」
「菖蒲のも充分甘酸っぱいけど!」
「そうかな」
「そうだよ…っと」
朝美は綺麗にランニングボレーを決めて、何だか嬉しそうに笑った。
「何?朝美」
「菖蒲もそんな時期が来たんだねーっ」
「うるさいなー。どんな時期よっ…ふぅ」
顧問の金岡先生のストロークがもろにストレートに来た。
男性のストロークは強い。
まあそれでもと難なく返したが、目の前に痛そうなボールが来るとやっぱり怖いな。
「でもさ菖蒲ー」
ふと朝美が顔を曇らせる。
「中原は気をつけな?女子とっかえひっかえしてんのよアイツ」
「知ってるよ」
同学年では有名な話。
だけどあの日の青葉の目に嘘なんて無かった……はず。
そう思いたい。
「まっ菖蒲に限ってそんなこたーないと思うけど…」
「私…好きだもん青葉。信じる。返事、頑張る」
「おうよ、頑張りな」
「本当に好きなの」
私が念を押すと、ちょうど玲子が捕り逃して飛んできたボールを朝美が渾身の力でスマッシュする。
「っはぁー!!この天然殺し!!ダメだあたし悶え死ぬわ!!」
「え、何言ってんの。死なないでよ!」
「あんたが殺したくせに」
「殺してない!」
恋愛相談は物騒に終わったけど……私は私なりに頑張ろう。
そう決意し、私はスマッシュをアングルに叩き込んだ。