願い事を一つだけ。【短編】
え、何…


咲さんは顔をしかめたままツカツカとこっちに歩いて来て、細い腕で私の肩を掴んだ。


「あなた、そんな性格じゃないでしょ」



あまりにも唐突でそして…………図星。



「咲。何で分かった?」


凜さんが不思議そうに咲さんを見る。


私はまだ固まったまま。


「当たり前じゃない、私だって猫かぶりなんだから。それに本性見抜くことに関しては人後に落ちないって言われてるわ」


「言われてねぇよ」


「言われてるわよ!」


「は?誰がそんなこと言うんだバーカ」


「世界中の皆様がよ!」


「はっ、咲の心の中の皆様だろ」


この人たち、本当に付き合ってるんだろうか。


最初は甘い感じがしたけど。


「ところで菖蒲さん。遅ればせながら、あたしは英野 咲です。それから、あなた今から家来なさい」


「え?あの私、」


「椿と、話したいんでしょ?」


肩越しに笑う咲さんは、すごく綺麗だった。
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