願い事を一つだけ。【短編】
頬を腫らして、俯いたまま立っている千崎。


大きなはずの千崎のユニフォーム姿が、何故だか私には小さく見えた。


「千崎…何で、嘘ついたの…?」


ねぇ千崎。

私、青葉のこと呪っちゃったよ。


ひぃちゃんまで理性失くして消す所だったのに。


私の痛みも黒い感情も、全部無駄だったっていうの?

それは千崎は悪くない、私が抱いただけの感情だ。


だけど、千崎の遊び半分で私の恋をグチャグチャにしたのよ?

ねぇ、

「答えてよ…」


頭でぐるぐる回る思考は何一つ整理されないまま、ぽつりと呟く。



「──好き、だったんだよ…間宮が」


ああ?と朝美が目を剥く。

「…え、千崎は朝美が好きだって」


「口実に決まってんじゃん…」

「はぁ?」


つい思ったことが真っ直ぐ口に出てしまった。


「好きだったんだよ!!間宮、朝美ちゃんと仲良いから朝美ちゃんの好きなもん聞いたらお前の好きなもん分かると思ったんだよ!!」


「うわぁバカだコイツ」


朝美の発言も容赦ない。


「それになぁ!「逆ギレすんじゃねーわよ!」


…本当に突っ込みにソツがないな。


「俺…青葉が珍しく本気でさ、しかも相手が間宮で。告白したのか、本当に好きなのかって聞いたら…明らかに照れて誤魔化すんだよ。…だから、だから邪魔してやろうと思った」 


「…ありがとう、千崎。でもゴメン。私、青葉しか好きになれない」


私も気持ちをはっきり伝えないと、これほど自分の気持ちに真っ直ぐな千崎に失礼だ。


千崎は弱々しく笑い、


「青葉、用具室」


それだけ言った。



そして私の身体が勝手に動いていた。
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