届屋ぎんかの怪異譚
何が何だかわからないまま上がりこんだ銀花は、朔の後ろにぴったりとくっついて廊下を進み、客間と思しき部屋に通された。
お茶を淹れてまいります、と言って老夫婦が出て行くとすぐに、
「おまえ、何の用があってここに来た。あの幽霊の女は、さがみ屋に関わりがあるのか」
と、朔は銀花に問いかける。
「ええ。さがみ屋三代目の保之助さんの恋人よ。保之助さんに伝えたいことがあるそうなの」
銀花が答えると、朔は苦々しい顔をした。
「そうか。……おまえ、覚悟しておけよ」
朔はどこか悲しげに目を伏せ、静かに言う。
唐突なその言葉に、銀花は眉をひそめた。
どういうことか問おうと口を開いたが、さがみ屋の主人が茶を持って戻ってきたので、その言葉を飲み込む。