届屋ぎんかの怪異譚
もやもやした思いをかかえたままの銀花だったが、その謎は、すぐに解けた。
「では、早速ですが依頼の話をしましょうか」
二人の向かいに座した主人が言って、朔の方を向くと、深々と頭を垂れる。
「――保之助の亡骸を、どうか取り戻してください」
一瞬、時が止まったように、銀花は感じた。
息の仕方を忘れ、周りの音が聞こえなくなった。
声を上げることも表情を変えることもなかったのは、冷静だったからでは決してなく、それだけ衝撃が強すぎたからだった。
その間にも、朔が老主人から話を聞きだしていく。
七日前に恋人をなくした保之助が、首をくくって死んだのは三日前のことだった。