届屋ぎんかの怪異譚



「考えるもなにも、そのままでいいんじゃないのか? あざみが早く成仏すれば、より早く二人があの世で再会できるかもしれないだろう」



「それで、いいのかしら?」



思いつめたような表情で言った銀花に、朔はけげんな顔をする。



「なんだかびっくりしてしまって、うまく考えがまとまらないのだけど……。どうして、ああもきっぱりと断言できたのかしらって、思ったの」



「断言……?」



「保之助さんのお父さんは、恋人を追って死んだのではないって、どうしてあんなにきっぱりと言えたのかなって。なんだか、冷たくないかしら? なんだか釈然としないの」



たとえ鬼の影が見えたとしても、時期から見て、あざみの後を追って首をくくったと信じるほうが妥当だ。


妖を見慣れている銀花や朔ならともかく、妖を見ることもできず、妖を信じているほうが珍しい只人であれば、なおのこと。



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