届屋ぎんかの怪異譚



銀花の言葉に、考え込むようにしばらく黙り込んだ朔だったが、やがて顔を上げると、突然きびすを返して小走りで銀花から離れていく。


急にどうしたんだろう、と、銀花がきょとんとした顔で見ていると、さがみ屋のとなりの茶屋へ入っていく。


お茶が飲みたかったのかしら、と、銀花はとまどったが、朔はすぐに出てきた。



「ほら、食え」



そう言って差し出したのは、ほんのり焼き跡がついた団子だった。



「え、どうして?」



わけがわからず尋ねた銀花の、朔はなかばむりやり団子をわたす。



「それ食ったら手伝え」



「手伝うって、何を?」



「決まってるだろ。首吊りの鬼を探す。ついでに、保之助の生前のことや、実際のところ保之助が本当に首吊りの鬼のせいで死んだのかも調べる」



その言葉を聞いて、銀花は驚きに目を見張った。



< 107 / 304 >

この作品をシェア

pagetop