届屋ぎんかの怪異譚
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二人が最初に訪ねたのは、保之助の婚約者であったあざみの家だった。
呉服くさま屋――四代続く、江戸でも有数の呉服屋だ。
二人を客間に通したくさま屋の主人は、とても人のいい老人だった。
生前の保之助を信頼していたようで、一人娘のあざみと義理の息子となるはずだった保之助の両方を失ったことを、いたく悲しんでいた。
「保之助さんは、なかなかいい若者でなぁ。あざみを幸せにしてくれるだろうって、期待してたんだ」
「あざみさんは、どうして亡くなったんですか」
と、銀花が尋ねると。
「あれはもともと体が弱いやつでな、秋頃に風邪を引いて、そのまま逝ってしまった。まさか保之助さんが後を追ってしまうとは、思わなかったなぁ」
あんなにいい若者が死んでしまって悲しい気持ち半分、
それほどまでに娘のあざみを愛してくれていたとわかって嬉しい気持ち半分、複雑な心境だと、老人は言う。
「保之助さんの亡骸が持ち去られた件について、何か心当たりはありますか」
そう尋ねたのは朔だった。