届屋ぎんかの怪異譚
――と、意気込んだはいいものの。
夕刻。最後の一軒から出てきた二人の顔はどちらも疲弊しきっていた。
二人の意気込みもむなしく、くさま屋以降は何の成果も得られなかったのだ。
得意先も友人たちも、皆言うことは変わらない。
保之助の亡骸については、口を揃えて全く覚えがないと言う。
そして保之助の生前については、実直な若者だった、あざみを大切にしていた、と。
「難しいものね、亡くなった人のことを調べるって」
「いっそ保之助が成仏せずに霊になっていたら楽なのにな」
「朔、不謹慎」
でも同感、と、銀花は小さく呟いた。
「続きは明日にして、今日はもう帰ろう」
朔がそう言って、銀花はそれに頷く。
確か明日も猫目が店番をしてくれるはず、と思いながら、薄暗くなりはじめた空を見上げる。