届屋ぎんかの怪異譚
「銀花、探してたんだ」
と言ったのは猫目だ。
今様と二藍はどちらが先に銀花を見つけるか、勝負でもしていたのだろうか。
猫目の首元に巻きついている二藍はいつもより不機嫌そうにそっぽを向いていた。
「猫目、どうしたの? お店で何かあった?」
「いや、店は大丈夫。ちゃんと時間通りに閉めてきたよ。だけど……店を閉めている間にいつのまにか、あざみがいなくなっていた」
銀花、見なかったかい? と尋ねる猫目に、銀花は困ったような顔をして視線を道の先へ向ける。
あざみはそこにいた。
逃げ回ることもせず、三間ほど先に立って、銀花を見ている。
そして、静かに、と言うように人差し指を口元に当てて、銀花に手招きをした。
「……あざみ、どうしたのかしら」
ぽつりとつぶやいて、銀花はあざみの方へ歩いていく。