届屋ぎんかの怪異譚
「それは、気の毒だったけれど。
息子さん、きっと立ち直れるよ。根拠はないけどね」
そんな気休めの言葉に、女は『ええ、そうね。わたしもそう思う』と、応える。
その顔が優しく笑ったように、銀花には見えた。
「あの子はきっと大丈夫だよ。だから、安心して。
あなたは行くべきところに行きなさい」
霧のように、今にも吹き飛ばされそうに頼りない影の、人間ならば顔のあるあたり。
その目元の、きっと女の涙が伝っているであろうところに、銀花が優しく手を触れる。
そのとたん、突風が吹いたように影が霧散し、代わりに一筋の光が空高く昇っていった。