届屋ぎんかの怪異譚



唐突に、あざみが謝る。

何のことかわからずに首を傾げた銀花に、かすかな微笑みを見せて。



『風伯さんが迎えに来てくださるまでの間、盗み聞きをしてしまいました。――まさか、亡くなっていたなんて』



あざみが聞いていたことには驚かなかった。

もしかすると、もう知っているかもしれないと、あざみが銀花の前に姿を現したときには思っていた。



伝言を伝えるべき保之助は現世にいない。

そのことを知ったあざみは、昼よりもずっと薄くなって、どんどん透明に近づいてきている。



「もうすぐ、幽世へ行ってしまうのね」



『そうですね。この世にこれ以上いる理由も、ないですから。銀花さま、お手を煩わせてしまって……』



「そんなこと、言わないで」



謝ろうとするあざみに、ぶんぶんと首を振って、銀花は言った。



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