届屋ぎんかの怪異譚
そういえば、狐は最後にそんなことを言っていた。
今更のように思い出した朔と猫目だが、それがいったいどうしたというのか、二人ともわからない。
背を向けた銀花は紺青の空を見上げる。
その視線の先には、つい先ほど薄い雲から顔を出した満月が、愁銀に輝く。
「朔……」
銀花が言って、一歩、二歩、朔から離れていく。
そして、ゆっくりと振り向いた。
「あたしを、斬る?」
朔と猫目が、同時に息を呑む。
「おまえ……!」
「ぎん、か……?」
振り返って顔を上げた銀花の瞳が、銀に輝いていた。
それは淡く光を放ち、夜の闇に浮かび上がる。
――まるで、月のように。